古くからインドに伝わる、お釈迦様がこの世に誕生される前のお話(ジャータカ)に、仏典童話として親しむことができます。
その中の「シビ王と鳩と鷹」というお話があります。
シビ王は心のやさしい王様でした。ある日、一匹の鳩が飛び込んできました。聞くと鷹に追われて逃げてきたといいます。王様が鳩を隠まって助けようとすると、次に鷹が飛び込んできて鳩を渡してほしいとのこと。聞けば、その鳩を食べなければ自分は死んでしまう…と言うのでした。
そこで心の優しい王様は、鳩と同じ重さの自分の体の肉を渡すから諦めてくれと交渉します。鳩を天秤に乗せ、もう片側に自分の足から肉を削ぎ落して乗せる。でも釣り合わない。
肉を増やす…釣り合わない。足を切り、手を切り、見た目には鳩よりも明らかに重そうなのに、やはり釣り合わない。
そこで王様、自分がまるごと乗ってみる。すると、鳩とちょうど釣り合った。
身体の大きさ・重さではなく「いのち」の重さは一緒なのだ…そう覚ったとき、「あなたはきっと仏さまになられるでしょう」と、鷹が神様の姿になった。
・・・というお話です。
4月、全国一斉休校になる前のこと。ピカピカの一年生として小学校に通い始めた息子はちょっと不安な気持ちを抱えながらの毎日。ちょうど同じころ、境内をテリトリーに子育てを始めたカラスがいました。
生き物を見つけたらとりあえず飼ってみる3兄弟は、休み中に見つけたニホントカゲ2匹を(そこそこ)大事に飼っていました。
息子の登校直前にカラスが不穏な動き・・・何と、日光浴させていた大事なトカゲをカラスがくわえて飛び立つところではありませんか!!!大声を出して追いかけるも、カラスは飛んで行ってしまいました。
当然のことながら、息子大泣き。そして、「カラスなんて殺してやるーーーっっ」と、親としては自分の耳と息子の口を塞ぎたくなる暴言。
その後、私が学校まで付き添い、泣きながら登校。事情を話して先生にお願いしてきました。
その日は半日登校で、ドキドキソワソワしながら息子の帰宅を待ちました。帰宅後は少し落ち着いた様子で、「仕方がない。トカゲは可哀そうなことをしてしまった。カラスは…取りに来ないようにカラス除け作ろう」とつぶやいた息子。
いのちの重さは一緒…とまでは悟れなくても、その次の日にカラスの本を借りてきて読んでいたところを見ると、カラスにはカラスの事情があることを何となく知ったのかもしれません。そして、普段何気なく見ている生き物でも境遇次第で「殺してやる」とまで言えてしまう自分の心の在り様も少し見えたかな。
学校という気持ちを変える場があったこと、「それでも学校に来てくれたんだね」と玄関で迎えてくださった先生に感謝しながら、気持ちが落ち着いた後に「シビ王と鳩と鷹」のお話をしたのでした。
理不尽なこと、悲しいことも大事な経験。自分が楽しんでいるところで、犠牲にしてしまったいのちがあったことも、大事な気付き。「ごめんなさい」が言えたら、少し見え方が変わるのかもしれませんね。
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ありがとうございます。
子ども達との日々は様々な事件が起こりますが、大事な学びです。